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2014年2月20日木曜日

北京邂逅 ・・・風䔥䔥として易水寒し


1969年以来45年ぶりの大雪、しかも2週連続。
寒さがじわりと骨身に沁みる。
 
       ・  ・  ・  ・  ・
 
  2年ぶりの北京訪問。
 今回は、「易」と「涿」を目当てにやってきた。

 易水は戦国時代のあの荊軻が「風䔥䔥として易水寒し・・・」と詠嘆した地であり、涿は三国時代の劉備の出生地であり、関羽、張飛と「桃園のちぎり(中文:桃園結義)」を交わした地である。

 1980~90 年代の間、私は北京に2回駐在し、8年弱暮らしていたが、その頃は日々のビジネスに没頭し過ぎていたせいか、中国の歴史にしろ、詩歌にしろ、大した関心を持っていなかった。 またその頃の河北省といえば、80年代は「通行証」がないと外国人は入れない土地であり、易(現在は河北省保定市易県)にしろ、涿(現在は同省涿州市)にしろ、河北省のどこか程度にしか思っていなかったのである。ところが、最近になって、じっくり地図を見てみると、易は意外にも北京からそう遠くなく、涿は北京市の隣合わせということを再認識。ならば・・・ということで、今回、上海からの帰国を北京に切り替えて周ってきたのである。

 その荊軻といえば、『史記』の刺客列伝の最後をかざる壮士。彼は、燕国の太子・丹(秦国の人質となっていたが、逃げ帰り、復讐を図る)の命を受け、秦王・政(後の始皇帝)の暗殺を企てるが失敗し、その場で殺された悲運の士である。荊軻は易の街まで太子・丹に見送られ、これから秦に向かうに当たり、易水のほとりに佇み、ほとばしる決意を胸に高々と吟唱するのである。

 北京から、地図を片手にタクシーを飛ばすこと約2時間、距離にして110Km 。今は、北京市南隣の保定市の行政区域にある。先ずは、地元地図を買うべく、街の中心地(=人民政府)をめざし、運よくそのすぐ高くに本屋を発見、首尾よく保定市の詳細地図を入手した。流石地元地図、易水までの道路がはっきりとあり、労少なくして、河の袂まで辿り着いた。易の街から川のほとりまで車で10分、約8Km。

 
 
 



 先ずは、地元地図を買うべく、街の中心地(=人民政府)をめざし、運よくそのすぐ高くに本屋を発見、首尾よく保定市の詳細地図を入手した。流石地元地図、易水までの道路がはっきりとあり、労少なくして、河の袂まで辿り着いた。易の街から川のほとりまで車で10分、約8Km。
 

 
 

 元々期待していなかったが、懸念した通り、川床は荒れ放題。まさに近年の不動産ブームの恩恵(?)を受け、コンクリート骨材の格好の供給源とされ、辺り一面が掘り返されている。まあそれでも、目的地に到達し気分高揚、荊軻の台詞を高吟する。

風䔥䔥兮易水寒 壮士一去兮不復還

 (䔥䔥として易水寒し 壮士ひとたび往けば帰らず)
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 その後、易の街での昼食を挟んで、涿へ向かうが、さて、何処を目指すか?
 手元に何のガイドブックもなく、あるのは易県で買った涿州市の地図だけである。劉備の故郷だから、記念館か墓か、何かあるだろうと地図を調べてみるも、何の標記もない。そこで運転手に頼み地元人に尋ねるが、「そんなものは知らん」だと。尋ねること3人目でやっと、「三義宮」(3人の桃園のちぎりを祭ったところ)というのがあると教えられ、向かう。




  それにしても、今どきの中国人の歴史無知・無感心にはほとほと呆れかえる。地元人でありながら「劉備」の名前さえ知らないのである。近代中国が如何に歴史教育をおろそかにし、革命思想教育に血道をあげ、また今世紀に入ってからは銭向けだけに目をくらましてきたかの、象徴的な事例である。このことは今回の涿州に限らない。昨年、蘇州に行ったおり、伍子胥の墓を地元の農夫らしき人に訪ねた時もそうだった。「夫差」の名さえ知らない連中が多いことにがっくりした。ましてや、「伍子胥」の名前なんて皆目、チンプンカンプンである。 ・・・・偉そうにいえないかな? 今どきの日本のギャルもこれと同類だから。
 
 「三義宮」は地元人が知らないくらいだから規模も対して大きくなく、参観者は我々意外にもう一組いるだけの閑散としたものだった。園内の係員の説明では、入り口の門は明代の建造物であるが、他の建物はすべて最近立てられたとのこと。観光客誘致を狙ってのことであろうが、それならそれでもう少し観光PRをすればいいのにと思うが、造ったら造りっぱなしというのが中国らしい。ぐるっと見て回ったが、正直、たいして観るものなし。地元人が知らないのも無理ないか?!・・・         



<< 追記 >>

俳人・与謝蕪村の句に易水を詠んだものがある。

     易水にねぶか流るる寒かな
 


まさに、今年の2月は寒い日が続く。
 



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